はじめての育児で、まず何をすればいいのか分からなかった。そんなとき、たまたま始めたのが夜の読み聞かせだった。上の子が生後6ヶ月のころ、とにかく夜なかなか寝てくれず、何か習慣を作らないとこちらが持たない、という切実な理由だった。
最初のうちは、内容なんて正直どうでもよかった。声を聞かせること自体が目的で、子どもがちゃんと聞いているのかも分からなかった。それが変わったのは1歳を過ぎたころ。ページをめくるたびに、目に見えて反応が返ってくるようになった。ああ、ちゃんと伝わっていたんだ、とそのとき初めて実感した。
子育て情報では「毎日の読み聞かせが大事」という言い方をよく見かける。うちも一時期はそれを真に受けて、無理にでも毎晩続けようとしていた時期がある。だが3人目が生まれてからは、それが崩れた。上の子は「ちゃんと読んでほしい」と真剣で、真ん中の子は「自分も一緒にやりたい」と割り込んでくる。下の子はただ泣く。同じように読み聞かせるなんて、物理的に無理だった。
しんどい日に無理をして読むと、声には出さなくても義務感がにじみ出る。それが伝わっているのか、そういう日に限って子どもの反応も薄い気がした。だから今は「今日は無理」という日は素直に休む。その代わり、できる日はちゃんと向き合う。うちにはこのくらいの緩さが合っていた。
長女は5歳になり、少しずつ自分でも文字を追えるようになってきた。それでも読み聞かせをやめる気はない。『おばけのてんぷら』を読んでいたとき、急に真剣な顔で「ママ、おばけってほんとはこわくないんだよね?」と聞かれたことがある。そこから「じゃあなんでこわいと思うの?」と会話が広がって、ただ読むだけでは起きなかった時間になった。読み聞かせは、物語を届ける手段であると同時に、会話のきっかけを作る時間でもあるのだと、そのとき気づいた。
正直な答えを言うと、「いつまで」という期限を決める必要はないと思っている。うちは3人それぞれ、今もそれぞれのタイミングで自然と本に触れている。世の中の「べき論」に無理に合わせるより、その日その家庭の余裕に合わせて続けたり休んだりする方が、結果的に長く続く。少なくともうちはそうだった。